最近のビッグマッチでは、試合当日へ向けて挑発や乱入といったアングル（仕掛け）が見られるが、今回の一戦が極めて特異だったのは、みちプロ10年の歴史がそっくりそのままアングルになっていたことだ。それだけに深くて重い。試合開始直後、サスケとデルフィンが向かい合ったまま、一歩も動かない。両者の間にできた微妙な距離感の中へ、ファンの思いは嫌でも引きずり込まれていく。これほど求心力に満ちた試合は最近では珍しい。この日の会場に詰め掛けたファンは、個人差こそあってもみちプロと10年の歴史を共有してきた。それだけにハッピーエンドで終わってほしかった。ところが、試合後の握手はなし。デルフィンは特別感情も見せぬままリングを後にした。これほどクールな姿は見たことがない。残されたサスケの悔恨。とってつけたハッピーエンドでなかった。だからこそ、そこに真実があった。（佐藤）

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